授業の目的・方法<Course objective and method>

 人はどのような知識をもっていて,その知識を使ってどのような情報処理を行っているのでしょうか.認知科学はこれを解明しています。本講義では,この認知科学の重要なテーマの一つである『人間のコミュニケーション』を紹介します。

 人間のコミュニケーションの特徴を,認知心理学,人工知能,認知言語学,脳科学(認知神経科学)などの各側面から詳しく解説します。

 (対面)授業の中で,認知心理学の模擬実験を行い,実験とはどのようなものか,体験してもらいます。また,認知科学のトピックを,ビデオを見てもらい,紹介します。

 

 私たちは,生まれてから毎日知らず知らずのうちに,コミュニケーションの方法を身につけていきます。意識的に考えることなしに身につけてきたコミュニケーションの方法がうまく機能するのは,それまで生きてきた環境の中でだけです。

 私たちをとりまく世界が大きく変わりつつあります.リアル,バーチャルを問わず,また,日本語であるか,外国語であるかを問わず,どのような環境の中でどのような相手とコミュニケーションを行うかを自分で意識的に考えていかなくてはならなくっています。

 この授業を通して得た知識を使って,人がどのようにコミュニケーションを行っているかに関する“仮説”を自ら考え現実の新しい環境に適用できるようにすること.これが,本講義の目的です。

 

 認知科学を知れば『人間の限界』,つまり私たち人間に不得意なことは何かが分かります.人間の限界が分かれば,うっかり見逃してきた良いやり方が私たちにあることが分かります.でも,私たちにできないことはAIに任せれば良いのです。認知科学を知ればAIや統計学がなぜ必要か,その理由も分かります。

 

 授業は,ズームによるリアルタイムの遠隔授業の形式で行います。認知心理学の実験にも参加していただきます。実験は,安全を確保したうえ,小樽本校の教室で対面で行います。また,期末試験も小樽本校で,対面で行う予定です。

 

達成目標/Course Goals

 本科目の履修を通して獲得が期待される能力・技能は以下の通りです:

人間のコミュニケーションを考える概念的な枠組みを習得できます。

毎日無意識に行っているコミュニケーションを意識的に考えることができるようになります。

コミュニケーションのあり方を効果的に議論でき,また日常生活の中で実際に実践できます。

 

授業内容/Course contents

1  認知科学,認知心理学,人工知能の歴史からAIの社会的な応用,AIとの向き合い方を考える

2  人間の言語情報処理の全体像

3  言葉を理解する際に使われる知識源

4  視覚の情報処理:錯視

  トピック:心の働きから見たディープラーニング

5  コミュニケーションの根源としての注意

6  作業記憶,短期記憶

7  長期記憶

  トピック:記憶の脳科学

8  言語の脳科学

9  言語音の知覚

10  潜在記憶

11  単語認知過程の概要

12  意味ネットワーク

13  単語認知のモデル

14  カテゴリー化

15  統語解析過程と統語知識

16  文の意味の理解

17  文章理解過程

18  即時性の原理

19  メンタルスペース,話者世界,可能世界

20  視点

21  情報のなわばり

22  指示表現の使い分け

23  デジタル機器,インターネット,言葉,映像を使ったコミュニケーション

  トピック:SNS(ソーシャルメディア)のもたらす社会的影響

24  概念的比喩と比喩的語彙:グラフや図を描くときに使う知識

25  修辞的な発話の類型と会話の公準

  トピック:異なる価値観を持った人とどう関わるか。

26  隠喩文理解過程の段階モデル(隠喩として理解する心的作業の時間経過)

27  段階モデルの段階性の実験的な検証

  トピック:人はなぜ嘘をつくか。

28  隠喩文理解過程の基本的メカニズム(顕著性の不均衡の仮説)

29  隠喩文理解過程の基本的メカニズム(アドホックなカテゴリー化)

30  間接的発話行為として機能する文の理解とアイロニーの理解

 

事前学修・事後学修/Preparation and review lesson

 事前学習:

 日頃から,新聞やテレビ,Webニュースなどに関心を持っていること。毎週の授業の前に,講義資料をマナバに掲載するので事前に目を通しておくこと。

 

事後学修:

 授業で紹介した専門的な概念について,より具体的かつ使えるものにするために,Webや関連文献などにあたってみることをお勧めする。

 

使用教材/Teaching materials

 マナバのコンテンツ機能を使って,授業で使用するスライドを毎回配布します。

 

成績評価の方法/Grading

 期末試験の得点,および実験の参加と講義への出席にもとづいて評価する。講義の内容に関連した実験に参加していただく予定です。

 

成績評価の基準/Grading Criteria

 社会情報学科標準成績評価基準に従います。

 

履修上の注意事項/Remarks 

毎回出席して,講義そのものに積極的に関わることが必要です。

 

リンク先ホームページアドレス/URL of syllabus or other information

 https://cognitive-science.jimdo.com/

 

実務経験者による授業/Courses conducted by the ones with practical experiences

 

 該当しません